仮面ライダーゼロワン×「夢」を哲学③ 刃唯阿は夢を語れるのか(不破と刃の夢)
仮面ライダーバルカン(不破諫)「いつか見つけてやるよ」「ZAIAをぶっつぶす」
不破さんは、飛電或人の姿を見て、敵を倒した後のことを考えるようになりました。
個人的には、ZAIAをつぶした後、その怒りの矛先をどこに向けるかが心配です。
ちなみに、前例は仮面ライダーバロン(駆紋戒斗)【仮面ライダー鎧武に登場】です。
仮面ライダー鎧武では、ユグドラシル→オーバーロードと敵が変わっていき、ライダーたちが共通の敵に対して共闘していきました。しかし、オーバーロードをすべて倒したとき、駆紋戒斗だけは、その怒りの矛先を世界に向けてしまいました。
ユグドラシルが生まれたのも、この世界で強くならなければいけなかったのも、この世界に生きる人間たちが原因。今ある命を根絶やしにし、新しい命で新しい世界をつくる。
これは「夢」というよりも野望という言葉の方が近いかもしれません。しかし、駆紋戒斗という男は、間違いなく世界を憎み、そして自分や弱い人間のために世界を変えようしました。方法については、仮面ライダーゼロワン×「夢」を哲学②でも語ったように、卑怯な手であってもいけません。そして、できる限り犠牲を生んではいけません。
でも、まぎれもなく駆紋戒斗は「夢」を叶えようとした仮面ライダーでした。
不破さんは似た境遇にいると思います。
人間の悪意を「アーク」にラーニングさせたのは、人間。そして悪意をもっているのも人間です。ライダーたちと世界を救った後、彼はどんな夢を語るのでしょうか。
「ヒューマギアをぶっつぶす」→「ZAIAをぶっつぶす」と目標を定めてきた不破さん。
これが「人間をぶっつぶす」に変わらないことを祈ります。
夢について考えるために補足しますが、自分が人間を憎むからと言って人間を滅ぼそうとする考えは間違っているという話をします。
それはつまり、人間の可能性を信じている側の意見を聞いていないからです。答えを出すには、まだ思考が足りていません。仮面ライダーゼロワン×「夢」を哲学②で取り上げた「自分(たち)以外の立場を考える」ことが必要です。
詳しくはこちらから
仮面ライダーゼロワン×「夢」を哲学② 迅は或人と同じ世界を志すか(或人・迅・天津の夢) - kamenridernaruse’s diary
それでも、人間を憎むなら、何年かかってでも人間を変える方にいかないといけません。それが、別の「夢」を持つ人と共存する生き方だと思います。
自分の夢のために他人の夢を奪わない、これは理想論ですが目指す価値のあることです。自分の夢が尊重されるためにはまず他人の夢を尊重する必要があります。
ここではこのような結論にさせていただきます。いつか駆紋戒斗の考察をブログでまとめたいと思いますので、そこで話し足りないことを載せます。駆紋戒斗の理想は、私自身の理想と重なります。しかし、彼のやり方はあくまで仮面ライダーという物語のなかで、そして社会として否定されないといけません。そのための議論は、もっと時間を使いたいです。
そして、今後の仮面ライダーゼロワンを予想するなら「アーク」は少なくとも、不破さんを利用すると思います。
アークは、「人間を滅ぼす」という目的のため滅亡迅雷net.を生み出し、ヒューマギアを利用してきました。
しかし、目的が「人間を滅ぼす」ことであるならば、ヒューマギアを使うことは必然ではありません。人間を利用して人間を滅ぼしたっていいのです。
不破さん自身の決断、アークの意志。それぞれどのような答えになるでしょうか。
(2020/04/26追記)
不破さんが夢を見つけました。「仮面ライダー」が夢ということで、主人公より主人公みたいな発言です。形としての戦士ではなく、その器たる存在ということでしょうか。
アークに利用されるのでは? 等と考えていましたが、その心配はなくなりました。
「よく聞け、ZAIA。俺は変わった。あの記憶はもうどうでもいい。俺にはな、憎しみなんてもういらない! 今の俺には夢があるからな。」
「お前(刃唯阿?)がつくった仮面ライダーという夢が。」
不破さんが夢のためにどう動くのか。それを踏まえてまた考察していきたいですね。
仮面ライダーバルキリー(刃唯阿)「???」
作中では、「道具」という言葉に反応するくらい、自分の意思で動くことを意識しています。プライドの高さ、戦えるだけの強さが本来の刃唯阿の魅力だと思いますが、彼女も人間だということを不破さんや私と同じ視聴者の方忘れていないでしょうか。
これだけ「道具」という言葉に過剰に反応するのも、今までの自分の行動は自分で決めたことじゃないかもしれないという疑念があるから。
不破さんと違って、彼女の「心の弱さ」が目立ちます。間違ってはいけないのは、女性だから弱いのではなく、人間らしく弱いのです。
天津垓が人間の負の部分のうち「悪」を表現しているとすれば、刃は心の「弱さ」という負の部分を表現しているということです。
違う言い方をすると、彼女くらい命を懸けて戦う者であっても、その心が傷つけられる瞬間、キーワードがあるということが作中で描かれています。
さて、そんな彼女の「夢」は一体なんでしょうか。
そもそも彼女に夢はないと思っていましたが、不破さんの「本気の夢を語るまで」という発言を考えると、夢はあるけれど話せないのではないかと今は考えています。これから見つけるという場合もありますが…。
いずれにしても刃が「夢」を語る瞬間がくるわけです。彼女は何を語るのでしょうか。難しいのは、刃というキャラによって描かれる「夢」は、「単純な性別を超えた人間的なもの」、「人間として一人の女性らしい幸せを描いたもの」のどちらもありえることです。
前者の場合、ZAIAに入った理由とも関連しそうです。技術職ですから、そういった技術全般に関する夢かもしれません。
後者の場合、「結婚したい」が一番想像しやすいと思います。これは別に女性は仕事しなくていいとか、闘わなくていいという話ではなく、むしろ刃さんは闘うことになってでも幸せになりたいという予想です。あくまで結婚は例示ですが、皆さんが女性らしいとわかりやすく(物語ですから)思うものになるかもしれません。
「技術」(仕事)か「結婚」(恋愛)のどちらかかなと思います。
後者であっても納得できる理由はすでに提示しましたけれど、他のキャラの「夢」と並ぶことを考えると、前者の夢が語られると思います。
しかし、この夢を語るときは刃さんが己の罪を認めるか、誰かが刃さんの弱さを認めたときでないといけないと思います。あるいは両方が必要です。
もちろん、人はなにかしら失敗をする生き物です。それがときに他者に迷惑をかけるものかもしれません。
そのときに、許してもらうためではなく、心の底から悪いことをしたのだという自覚から生まれる罪の意識、謝罪。
この瞬間を省くと、いくら操られていたとしても、天津の悪事に加担したという部分が宙に浮いてしまいます。夢を語っても、誰も納得しなくなるでしょう。
(迅は、30話で或人と話しているとき、後悔が見えましたよね)
そして、人は弱い生き物です。誰だって弱い部分があります。
刃は、プライドの高さからか、今まで強かったからか、その弱さを認めてもらえない状況にいます。
天津を出し抜くという展開も面白そうですが、登場人物全員が弱い部分を見せないというのは、弱い人の励みになる一方で、弱い人に「強くあらねばならない」という規範を与えてしまいます。
弱い部分があってもいい、なんなら弱くてもいい、それを認めた後にどうするかが大事。
「夢」を描く仮面ライダーゼロワンでは、ここまで語れる作品であってほしいという個人的な期待があります。
いずれにしても、仮面ライダーゼロワン32話以降の展開が楽しみですね。
(2020/04/26追記)
「夢」を大事にしてきた他の仮面ライダーたちとは違い、「信念」を提示した刃(仮面ライダーバルキリー)。
「私に夢はない。でも、信念がある。技術者としての信念が。テクノロジーは人に寄り添ってこそ意味がある。」
「あんた(天津垓)は、テクノロジーで人の夢をもてあそんだ。私は、私はあんたを絶対に許さない!」
ヒューマギアはテクノロジーであり、“人に寄り添う”道具。暴走の危険があれば止めるし、破壊もする。反対に、暴走の危険が無ければ破壊しない。
天津にとっての道具とは、自分の思い通りになる物・者のこと。当然、ヒューマギアにも人にも自分に逆らう自我はいらないわけです。
刃にとっての道具は、人に寄り添うもの。この違いが、明確に描かれたのが33話でした。
これが、刃さんの今までの行動を説明する軸になりそうです。そして、テクノロジーで人の夢をもてあそぶことは、自分の信念に反する。強い想いで、ZAIAから離反しました。
この作品の人物はみんな心が強いですね。刃さんは、自分自身が道具扱いされてもギリギリまで耐えていました。
しかし、テクノロジーを自分の信念に反する形で使われたとなると、すぐに反旗を翻しました。
結局、彼女に夢はありませんでした。夢があるというつもりで書いていた記事だったので大半の内容がかみ合わなくなりましたね。しかし、夢とは違う信念。これも考察する意義のあるものです。しっかり考えてみたいですね。
そして、刃は今後、夢を持つことになるのでしょうか。